国債3.1%が商社株の配当利回りを超えた|私が売らず、買いもしない理由

投資ルール・考え方

この記事でわかること(3行まとめ)

  • 米国の物価指標は予想を下回ったのに、米10年債利回りは2002年以来の水準まで上昇しました。日本の10年国債も30年ぶりの3.1%です
  • 日本の10年国債の利回りが、主要商社株の配当利回りをすべて上回りました。 減配リスクのない国債のほうが、株より高い利回りを出している状態です
  • それでも私は商社株もSPYDも売りません。ただし、その理由は「私が昔買ったから」であって、今から買う人には当てはまりません

今週、何が起きたか?

2026年9月28日から10月2日の1週間は、高配当株を持っている人にとって、かなり重い週でした。

指標今週の水準補足
米10年債利回り一時5.33%2002年以来の高水準。2007年のピークも超えた
日本10年国債利回り3.095%(一時3.110%)1996年以来、30年ぶりの高さを連日更新
米コアPCE(8月)前年比3.0%予想の3.3%を下回った
日経平均6万8,309円前週末比+1,945円、3週連続上昇
SPYD45.48ドル(10月1日)9月22日の46.92ドルから下落

数字を並べると、一つ奇妙なことに気づきます。

物価は予想より落ち着いたのに、長期金利は上がっている。

ここが今週の本質です。

なぜ、物価が落ち着いたのに金利が上がるのか?

普通に考えれば、インフレが収まれば金利は下がります。実際、物価指標の発表を受けて、10月の利上げ確率は週初の約70%から半分以下まで下がりました。

短期の金利(利上げ観測)は下がった。でも長期の金利は上がった。

両者が逆方向に動いています。

背景として挙げられているのは、原油高、世界的な債券安、財政への警戒、そしてAI・データセンター投資に伴う資金需要です。つまり物価ではなく、国債の需給や財政の問題が長期金利を押し上げている、という見方です。

日本も同じ構図です。日米の中央銀行がインフレ抑制に動くという観測に加え、財政への不安が重なって債券が売られ、長期金利は9月に3%の大台を突破しました。

「インフレが落ち着けば、金利も下がるはず」という前提が、今週崩れました。

これは、高配当株を持つ人間にとって、かなり重い話です。金利がいつ下がるのか、物価を見ていても分からなくなったからです。

日本:国債が商社株の配当利回りを上回った

今週いちばん考えさせられたのが、この表です。

銘柄配当利回り(会社予想)
日本10年国債3.095%
三井物産2.86%
三菱商事2.66%
伊藤忠商事2.00%

※配当利回りは10月1〜2日時点の株価ベース

国債の利回りが、主要商社の配当利回りをすべて上回っています。

国債は、日本が破綻しない限り約束どおり利息を払います。減配はありません。一方、株式の配当は業績次第で減ることもあります。

リスクの低い国債のほうが、リスクの高い株式より高い利回りを出している。 高配当株を「利回りで選ぶ」という考え方そのものが、問われている状態です。

以前「配当利回り4%は本当に高配当か?」という記事で、長期金利が上がった時代の判断基準について書きました。あのときの長期金利は2.9%でしたが、1か月で3.1%まで上がり、とうとう商社株の利回りを超えました。

配当利回り4%は本当に「高配当」か?|長期金利3%時代の新しい判断基準
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金利上昇は、商社の利益にも効いてくる

もう一つ、見落とせない点があります。

金利上昇は、株価の割高・割安を変えるだけではありません。配当の原資となる利益そのものを削る方向にも働きます。

総合商社は、大きな投資を借入金でまかなうビジネスです。伊藤忠商事は決算資料の中で、円金利の上昇と借入金の増加に伴う金利収支の悪化を、減益要因の一つとして挙げています。

直近の決算では、ネット有利子負債が前期末から4,108億円増えて3兆4,351億円になりました。

ただし公平に書いておくと、伊藤忠の本業は好調です。 同じ決算で営業利益は前年同期比20%以上増えています。金利負担の増加を、今のところは本業の成長で吸収できている、というのが正確な状況です。

それでも、金利が上がり続ければ、この「吸収できている」状態がいつまで続くかは見ておく必要があります。

株価も冴えません。三菱商事は9月24日から10月2日にかけて、4,811円から4,694円へと下げています。

それでも、私の利回りはまだ負けていない

ここで、私自身の数字を出します。

銘柄私の取得原価取得原価ベースの配当利回り
三井物産760円約19%
三菱商事1,224円約10%
伊藤忠商事429円約10%

市場の配当利回りは国債に負けました。でも私の利回りは、国債の3倍から6倍あります。

これは銘柄選びが上手かったからではありません。商社株がまだ「割安で万年放置」と言われていた頃に買って、その後たまたま増配が続いた。それだけです。

【商社マンの眼】三菱商事・三井物産・伊藤忠商事。この「御三家」を持ち続ける理由と、今は買い増さない理由
元商社・金融業界出身の投資家が、三菱商事・三井物産・伊藤忠商事の「商社御三家」を一生持ち続ける理由をガチ分析。2016年の最終赤字転落時に管理部門で目撃した「商社の底力」とは?各社の社風の違いや、配当の持続可能性、PBR視点での投資判断など、中の人ならではの視点で2026年の商社株投資を解説します。

だから、今週の国債利回りを見ても、私に商社株を売る理由はありません。 国債3.1%に乗り換えるために、取得利回り10〜19%の資産を手放すのは、計算が合いません。

ただし、今から買う人には当てはまらない

この数字は、私が昔買ったから出ているものです。

今日、三菱商事を買えば、配当利回りは2.66%です。国債の3.1%に負けます。しかも株価は日々動き、減配の可能性もゼロではありません。

商社株の記事でも書きましたが、持ち続けることと、今買うことは、まったく別の判断です。

私自身、商社株は買い増していません。PBRがかつての1倍割れから大きく上がり、もはや割安株ではないと判断しているからです。そして今週、国債との利回り比較という別の物差しでも、今は買う局面ではないことがはっきりしました。

商社株の記事の多くは「今が買い時」で締めくくられます。でも今週の数字を見る限り、私には言えません。

米国:SPYDと国債の差は、2週間で広がった

米国の高配当ETFも見ておきます。

9月18日に「国債5%とSPYD4%」という記事を書きました。あのときの米10年債は4.95%でした。

9月18日時点今週
米10年債4.95%一時5.33%
SPYD配当利回り約4.1%約4.3%
差約0.9ポイント約1.0ポイント
SPYD株価46ドル台後半45.48ドル(10月1日)

国債との差は、さらに広がりました。

SPYDの配当利回りが少し上がっているのは、株価が下がったからです。SPYDは不動産(REIT)の比率が高く、金利上昇の影響を受けやすい。今週の長期金利上昇が、そのまま株価に出ています。

私のSPYDの取得単価は40.49ドルで、取得単価ベースの利回り(YOC)は約5%です。表示利回りより高いので、こちらもまだ国債には大きく負けていません。

ただ、含み益は確実に縮みました。 9月中旬に48ドル台だった株価が45ドル台まで下がり、含み益は約2割から1割強になっています。

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日経平均は上がったが、高配当株は置いていかれた

ちなみに今週の日経平均は、週間で約2,000円上がっています。

ただ、上げたのはAI・半導体関連です。10月1日に日経平均は2,203円上昇しましたが、構成銘柄225のうち値上がりは108、値下がりは115。アドバンテスト1銘柄だけで、指数を約722円押し上げていました。

指数が2,000円以上上がった日に、構成銘柄の半分以上が下がっていた。

5月に書いた「日経平均は最高値なのに、自分の株は上がらない」という現象が、そのまま再現されています。高配当株を持っている人ほど、今週の日経平均の上昇を実感できなかったはずです。

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私が決めたこと

今週の数字を見て、私が決めたのは次の3つです。

①商社株もSPYDも売らない

取得原価ベースで見れば、国債に乗り換える理由がありません。表示利回りではなく自分の利回りで判断する、という原則は変えません。

②新しく高配当株は買わない

今の配当利回りは、国債に負けています。国債より利回りが低く、しかも減配と値下がりのリスクがある資産を、今あえて買う理由が見つかりません。

③新規資金の置き場として、国債を本気で検討する

これが今週いちばん変わったところです。

個人向け国債は、9月募集分で変動10年が1.95%、固定5年が2.24%、固定3年が1.96%でした。固定5年が変動10年を上回るという逆転も起きています。

10年国債そのものは3.1%ですが、個人向け国債の変動10年は「基準金利×0.66」で決まるので、そのまま3%にはなりません。それでも、為替リスクも減配リスクもなく、元本が保証されて税引後1.5〜1.8%。これは、ほんの2年前には考えられなかった水準です。

次回の10月募集分は10月8日から始まり、利率はその直前に発表されます。長期金利がここまで上がった以上、次の利率はさらに上がる可能性があります。

まとめ

  • 物価は落ち着いたのに、長期金利だけが上がった。原因は物価ではなく財政や国債の需給にあるという見方
  • 日本の10年国債(3.095%)が、主要商社株の配当利回り(2.00〜2.86%)をすべて上回った
  • 金利上昇は、商社の利益そのものにも効き始めている
  • 私の取得原価ベースの利回りは10〜19%で、まだ国債に負けていない。だから売らない
  • ただし、それは昔買ったからであって、今から買う人には当てはまらない。だから今は買わない

金利のある時代に戻ってから、「高配当」という言葉の意味が変わってきたと感じています。

利回り3%で「高配当」と呼べた時代は、国債の利回りがほぼゼロだったからです。国債が3%を超えた今、株式の配当利回りは、国債と比べて初めて意味を持ちます。

25年投資してきて、比べる相手が変われば答えも変わる、ということを何度も経験しました。今週は、その物差しが大きく動いた週でした。


※本記事は2026年10月3日時点の公開情報にもとづく個人の記録であり、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。配当利回り・株価・金利はいずれも執筆時点の数値で、日々変動します。「一時」と記載した金利は日中の高値であり、終値とは異なります。投資判断はご自身の責任でお願いします

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