HDVが新NISAで買えない理由|減配ではないと言える根拠

投資判断の記録・個別銘柄

米国の高配当株ETFの代表格であるHDV(iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF)が、年4回(四半期)分配から年12回(毎月)分配へ変更されました。

これを受けて、証券会社から注文を強制キャンセルする旨のメールが届いた方も多いはずです。

「あの優良ETFが、ついに元本を削る毎月分配型になってしまったのか?」
と不安になった方もいると思います。

先に結論を3つ書きます。

  1. HDVは新NISAの成長投資枠で買えなくなりました。 毎月分配型の商品は対象外というルールに該当したためです
  2. 減配ではありません。 1回あたりの金額は減りますが、年間の合計は分配回数の変更では変わりません
  3. すでに保有している分は、売る必要はありません。 NISA口座で買った分もそのまま非課税で持ち続けられます

商品そのものが劣化したわけではなく、日本の制度の壁にぶつかっただけ、というのが今回の本質です。

25年の投資経験(大負けも多数あります)とFP2級の目線で、何が起きたのかと、これからの買い方を整理していきます。

 

HDVが新NISAの対象外になった理由

証券会社が注文をキャンセルしたのは、HDVが危険な商品になったからではありません。

新NISAには、毎月分配型の商品は対象外とするというルールがあります。
HDVが毎月分配へ変更された瞬間、自動的に成長投資枠の対象から外れました。

つまり、以下のような整理になります。

 変更前変更後
分配頻度年4回(四半期)年12回(毎月)
新NISA成長投資枠対象対象外
経費率0.08%0.08%(据え置き)
中身の銘柄構成変更なし

変わったのは分配の回数と、それによって生じた制度上の扱いだけです。
ポートフォリオの中身も、コストも、そのままです。

なお、対象銘柄の判定や取扱いは証券会社ごとに時期がずれることがあります。買い付けの前に、ご利用の証券会社の成長投資枠対象銘柄一覧でご確認ください。

 

「HDVが減配した」ように見えるのは、なぜか?

検索していると「HDV 減配」という言葉をよく見かけます。
ここは誤解が生まれやすいところなので、丁寧に説明します。

分配回数が3倍になれば、1回あたりの金額はおよそ3分の1になります。

これまで四半期に1回まとめて受け取っていたものが、3回に分けて振り込まれる。
受け取る総額は変わりません。
ケーキを4等分から12等分にしても、ケーキ自体の大きさは変わらないのと同じです。

にもかかわらず、証券口座の入金履歴を見ると1回あたりの数字が明らかに小さくなっているので、「減配された」と感じてしまう。これが「HDV 減配」で検索されている正体だと思います。

そもそもETFの分配金の原資は、組み入れられている企業から受け取った配当です。
支払う回数を変えても、原資である配当が増えたり減ったりすることはありません。

判断するときは、1回あたりの金額ではなく、年間の分配金合計と、そこから計算した分配金利回りで見てください。ここが変わっていなければ、減配は起きていません。

 

毎月分配型の投資信託とは、決定的に違う

私はこれまで、元本を取り崩して見せかけの分配金を出す毎月分配型の投資信託を、あまり良いものだと思ってきませんでした。手数料が高く、自分の資産を削って配っているだけの商品が実際に存在するからです。

ただ、今回のHDVはそれらとは根本的に違います。理由は2つあります。

タコ足分配が、仕組み上できない

一般的な投資信託は、運用益がなくても元本を取り崩して分配金を出すことが可能です。
これがいわゆるタコ足分配です。

一方でHDVのようなETFは、実際に組み入れ企業から受け取った配当から、コストを引いた分しか分配できません。手元にない現金を配ることは構造的に不可能です。

コストが変わっていない

経費率は年率0.08%のまま据え置きです。分配回数が増えたからといって、手数料が上がったわけではありません。

つまり「毎月分配型になった=危険な商品になった」という連想は、HDVに関しては成り立ちません。制度のルールに引っかかっただけで、商品としての健全性は維持されています。

すでに保有している分は、どうなるのか?

ここが一番不安な方も多いと思うので、はっきり書きます。

慌てて売る必要はありません。

  • 特定口座で保有している分:そのまま保有可能。何も変わりません
  • NISA口座で買い付け済みの分:そのまま非課税で保有できます。後から課税に切り替わることはありません
  • 受け取る分配金:NISA口座で買った分については、引き続き非課税です

対象外になったのは、あくまでこれから新しく買う場合の話です。
過去に取得した分にさかのぼって適用されるものではありません。

強制キャンセルのメールは文面が事務的なので不安を煽られますが、内容としては「新規の注文が制度上通せなくなった」というだけのものです。

これからの買い増しを、どうするか?

ここからは判断が分かれます。3つのパターンに整理します。

パターン1:特定口座で、そのまま買い続ける

向いている人

  • 課税されてもいいので、毎月の現金収入を最優先したい人
  • 新NISA枠は他の商品(インデックスファンドや個別株)で使い切る予定があり、HDVはサブとして位置づけている人

毎月分配には実務的なメリットがあります。

生活費の支払いサイクルと一致するので家計管理がしやすく、成果が毎月目に見えることが投資を続けるモチベーションにもなります。

将来的に配当金で生活費を賄いたい人には、相性が良い形です。

パターン2:NISA対象の他のETFへ、買い付けを切り替える

向いている人

  • 新NISAの枠を使って、非課税で効率よく高配当ETFを積み立てたい人
  • 税引き後の利回りと、複利効果の最大化を重視する人

課税口座で持つ場合、分配金には国内で約20.315%、加えて米国での現地課税10%がかかります(外国税額控除で取り戻せる部分はありますが、確定申告の手続きが必要です)。

毎月入ってくる嬉しさの裏で、着実に目減りしている点は直視しておくべきです。

さらに、受け取った分配金を再投資する場合、税引き後の減った金額で買い直すことになるため、長期になるほどNISA対象商品との資産拡大スピードに差が開きます。

切り替え先としては、引き続き新NISAの対象であるVYMSPYDが候補になります。
それぞれ構成銘柄の性格が違うので、単純な置き換えではない点は押さえておいてください。

関連記事:

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パターン3:日本の高配当商品へ寄せる

外国税額控除の手続きそのものを避けたいなら、国内の高配当商品に寄せるという選択肢もあります。二重課税が発生しない分、確定申告の手間が減ります。

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まとめ:見た目の心地よさではなく、税引き後の実利で選ぶ

今回の変更を整理すると、こうなります。

論点結論
HDVは減配したのか?していない。1回あたりが減っただけで年間合計は変わらない
新NISAで買えるか?買えない。毎月分配型は成長投資枠の対象外
商品として劣化したか?していない。経費率0.08%、中身も変更なし
保有分を売るべきか?その必要はない。NISAで買った分も非課税のまま
今後の買い付けは?目的次第。現金収入重視なら特定口座、非課税重視ならVYMやSPYDへ

25年投資してきて痛感しているのは、見た目の心地よさで決めてはいけないということです。毎月お金が入ってくる嬉しさは本物ですが、長期になるほど効いてくるのは「いくら受け取ったか」ではなく「税金が引かれた後に手元にいくら残ったか」のほうです。

私自身、分配金の額面に引っ張られて判断を誤ったことが何度もあります。
手取りで計算し直したら、まったく別の結論になっていた、ということが。

HDVは今でも低コストの優良ETFです。パニックになって売る理由はどこにもありません。

ただし、これから新しく使う枠をどこに置くかは、自分の投資目的に合わせて冷静に組み直したほうがいいと思います。毎月の現金が欲しいのか、将来の資産最大化なのか。答えは人によって違います。

制度のルール変更に振り回されないためには、税金と非課税制度の仕組みを自分で理解しておくのが結局は一番の近道です。FPの知識を体系的に学んでおくと、こういうニュースが出るたびに人の解説を探さなくて済むようになります。

「新NISAや税金の仕組みをもっと根本から理解して、国や証券会社のルール変更に振り回されない実務知識を身につけたい!」という方は、FP(ファイナンシャルプランナー)の知識を体系的に勉強してみるのもめちゃくちゃ価値があります。

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